アクセスカウンタ

悠久の唄

プロフィール

ブログ名
悠久の唄
ブログ紹介
類まれな才能を有しながら、世に出ることのなかった不幸なサラリーマン詩人「ゆうとの」。彼が残した至宝のメロディと詩を今ここに紹介します。
help RSS

ようこそ! 「悠久の唄」 へ

2005/10/25 06:32
画像



いらっしゃいませ! 
「悠久の唄」へようこそ!

ここでは、心に沁みるメロディと詞をご用意しております。。
少し疲れた心を癒すために、どうぞ、1曲聴いて行ってください。。

こちらからどうぞ → [1曲目「終わらない夏」]

歌詞(自作)は全部で102作品あります。。→ [歌詞の一覧]
そのうち曲が聴けるのは35作品です。。→ [曲の一覧]

どうかゆっくりと、毎日1曲ずつ聴いて、見て、みてください。。

作詞作曲に興味のある方、今からやってみたい方、はぜひ、「作詞作曲スクール」(初心者向け)をのぞいて見てください。。

→ [作詞スクール]  → [作曲スクール]

レトロな小説(自作)はいかがでしょうか? 1981年代を舞台にした学生のバイブルと呼ばれた小説です。。 読み始めると必ずハマります。。

→ [小説「愛を抱いて」]

どうか、ごゆっくり。。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 3


音律について

2005/10/22 08:23
音律について


ピアノの鍵盤をド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ドと弾いたとき、それぞれの鍵にはそれぞれ異なった周波数が対応し、それぞれ異なった高さの音が聴こえる。
この音高の間の周波数関係を、「音律」という。

ア・カペラの合唱や弦楽四重奏を聴くと、ピアノやシンセサイザーの音にはない、澄んで融け合った響きを感じる。
なぜか。
ピアノやシンセサイザーなどの鍵盤楽器は、「平均律」と呼ばれる音律に調律されているが、ア・カペラの合唱や弦楽四重奏では、「純正律」や「中全音律」といった昔の音律で演奏することができるからである。

西洋音楽における、音律の歴史を紹介しよう。
まず、ギリシャ時代には、5度の音程(ドとソの音程)の周波数比を2対3と定義して音律を構成した。
これを「ピタゴラス音律」と呼ぶ。
この音律は、ギリシャ時代のような、単一の旋律を演奏する場合には問題がなかった。
その後、西洋音楽はより複雑なものへと発展し、12世紀になると、複数の旋律を同時に奏でる音楽が出現し、その中で3度音程(ドとミの音程)が多用されるようになった。
ピタゴラス音律における3度音程は、複雑な周波数比を持っていた。
単純な周波数比の音程は融合・協和するが、複雑な周波数比は「うなり」を生じたり、「粗い」響きになる。
したがって、ピタゴラス音律では、3度音程の2音を同時に奏でたとき、その響きが美しくなかったのである。
そこで、3度音程の周波数比を4対5と単純化することで響きを美しくした音律が登場した。
これが「純正律」である。
純正律では5度も3度も美しく響いたが、新たな問題も抱え込んだ。
それは、大きな全音と小さな全音という、周波数比の異なる2種類の全音の音程関係が音律の中に存在するという矛盾であった。
この矛盾を解決するべく、大きな全音と小さな全音の中間的な「中全音」を持つ、一群の「中全音律」と呼ばれる音律が考案された。
ところが音楽の発達はさらなる問題を呈示した。
西洋音楽は古典派からロマン派へと展開し、1曲の中で次々と転調することが多くなってきた。
たとえば、ハ長調の中全音律に調律したピアノで、全く別の調の主音を中心とした3度音程や5度音程を演奏すると、これらは非常に複雑な周波数比を持ち「きたなく」響くのである。
したがって、中全音律は転調が頻繁におこなわれる音楽には向いていなかった。

転調の問題を解消した音律が現在の「平均律」である。
平均律はオクターブ内に12の半音が含まれることを利用して、オクターブの音程を正確に12等分して作った音律である。
平均律は、3度音程も5度音程も少しきたないが、そのきたなさの程度はどの調でも共通な、妥協の音律である。
弦楽器やア・カペラの合唱では各音の高さを自由に調整できるため、平均律ではなく、もっと響きの美しい旧来の音律によって音楽を演奏することが可能なのである。

一度、「うなり」や「粗さ」のない純正律の3度音程や5度音程を聴いてみてもらいたい。
あなたは、どのように感じるだろうか。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


絶対音感と相対音感

2005/10/19 21:59
絶対音感と相対音感


音楽を聴いて、ピアノやギターで音を探ることなく、そのメロディを完全に正しい音名で言い当てることができる人がいる。
また、ギターやヴァイオリンを、ピアノの音や音さの音を聴くことなしに正しく調弦できる人もいる。
このように、外から与えられる基準音なしに、正しい音名がわかる能力のことを「絶対音感」という。
絶対音感を持っていると、ランダムに音高が変化するようなメロディを聴いても、1つ1つの音名がわかるため、これらを難なく楽譜に書くことができる。
また、楽譜を見て正しく歌うことも容易である。
このような芸当は、相対的な音感しか持たない私などにとっては至難の業である。
したがって、楽譜を見てすぐに歌う「視唱」や、音楽を聴いてそれを記譜する「聴音」を遂行するためには、絶対音感は非常に有力な武器になる。

しかし、絶対音感を保有する方が不利な場合もある。
たとえば、あるメロディをハ長調と嬰ハ長調のちょうど中間の高さの調で演奏する場合。
この場合の調においては、「ド」の音は実際の「ド」と「ド#」のちょうど中間の高さになる。
絶対音感を手がかりにすると、このような音の音名は判断が難しい。
そのため、メロディの認識に時間がかかったり、メロディを誤認したりする。
一方、相対音感しか持たない者は、メロディの音の高さの相対的関係のみを手がかりにするため、ハ長調の時と同様にメロディを認識できる。
見ていると、絶対音感保有者は、上のように相対音感を使った方が有利な場合にも、絶対音感を使ってしまう。

絶対音感を持つ人は、楽器音以外の音でも正しく音名を言い当てることができる。
救急車のサイレンやエアコンのノイズを聴いて、その音の高さをピアノやギターで正しく再現できる。
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0


第4回 作曲スクール

2005/10/08 20:16
 4   リ ズ ム と 編 曲 

・リズム・セクション

リズム楽器には、『ドラム』と『ベース』があります。
ドラムには『バス・ドラム』と『スネア・ドラム』と『ハイ・ハット』があります。
ドラムの基本的なパターンを紹介しましょう。
まずバスドラです。

     B          B   B         B
BD  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


次はスネアです。

            S             S
SD  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


そしてハイハットです。 ハイハットには『オープン』と『クロウズド』があります。主にはクロウズド・ハイハットを使います。

     H   H   H  H   H   H  H   H
HH  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


以上の3つを同時に鳴らすと、8ビートの基本的なリズムになります。

H   H   H  H   H   H   H   H
       S             S
B          B   B          B
♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


H   H   H  H   H   H   H   H
       S             S
B          B      B
♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪  ♪


シンセサイザーに入っているリズムをステップライトを使って逆に見てみると、どのリズム楽器をどのように打ち込んであるかがわかります。

ベースはバスドラの位置へコードの主音を入れるのが基本となります。


・音色

曲の伴奏にどんな楽器を使うかは、作曲が完成した時点で既にイメージされているものです。
・ベース(エレクトリック・ベース 、ウッド・ベース )
・ギター(エレクトリック・ギター 、アコースティック・ギター)
・オルガン
・ピアノ(アコースティック・ピアノ、エレクトリック・ピアノ )
・ブラス(トランペット、サックス、フルート、ホルン )
・ストリングス(バイオリン 、チェロ )


・オブリガード

メロディを作曲した時、旋律の切れ目などに別のメロディが聴こえるはずです。 それをサブ・メロディのように作りあげると、オブリガードができます。 オブリガードは、コードを決定する決め手にもなります。

ギターなどリード楽器が演奏する繰り返しのオブリガードを、『リフ』と言ったりします。

コードの一番高い音は、自然のオブリガードになっています。 これは、和音の中の一番高い音が聴こえやすいからです。

コードの中にない音で小節の中で目立つ音を、『テンション』と大げさに言ったりしますが、あまり気にしなくていいです。
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


第3回 作曲スクール

2005/10/06 14:12
 3   展 開 

さあ、それではいよいよメロディとコードの展開を説明します。

じつは、メロディはコードの中の音が散りばめられたものです。 ですから、先にコードが決まっている場合、メロディはコードの音の中から選ぶという制約を受けることになります。

メロディにコードをつける場合、メロディの音の1つ1つにコードをつけても良いのですが、普通、明らかにコードが変わるまでは1つのコードをつけます。 つまり、ある程度のメロディの集まりに1つのコードがついているのです。

1つのメロディには、1つのコードしかつかない、ということはありません。 1つのメロディには、いくつかのコードがつく可能性があります。 そして、どのコードを選ぶかが、まさに作曲のおもしろさです。

たとえば『ド』という音には、ドミソ(C)、ラドミ(Am)、ファラド(F)や CM7、Am7 、FM7 などが理論上つけれます。

あなたがメロディを作った時、きっとコードも一緒に聴こえているはずです。 初めはよく聴こえなくても、作曲を続けていくと、はっきり聴こえるようになります。

[1]コードの展開(コード進行)

メロディはコードの一部ですから、コードの展開を知っていれば、ことは足ります。 まずは、大まかなコード進行を覚えていただきます。
音楽とは、『1度で始まり、1度で終わり』ます。さらに、『1度で始まり、4度へ展開し、5度へ行って、1度で終わり』ます。

       ソ       ド       レ       ソ
       ミ       ラ       シ       ミ
       ド       ファ      ソ       ド
keyC    C       F       G       C
のとき   1度  →  4度  →  5度  →  1度


        ミ      ラ       シ       ミ
        ド      ファ      ソ       ド
        ラ      レ       ミ       ラ
keyAm   Am     Dm      Em     Am
のとき   1度  →  4度  →  5度  →  1度

5度は『終わりを予感させるコード』と言われています。 普通はセブンス(属七の和音)(G7,E7)をよく使います。
が、しかし、これは古い(クラシックな)セオリーです。 現代(ポップス)では、1度からいきなり5度へ進み、終わるどころか延々続いて行くことなど日常茶飯事です。

コードの展開とは、次のコードへ移る時のしくみです。 これは、『何度先のコードへ移るか』ということがポイントです。 つまり、コードの移動距離が問題なのです。

・2度への展開 〜(C→Dm)近い距離への展開なので、あまり目立ちません。 盛り上がり(高音)を維持するために、サビでよく使います。(F→G)

・3度への展開 〜(C→Em)割と美しい展開です。 少し落としたような感じになります。
・4度への展開 〜(C→F)カントリーな展開です。

・5度への展開 〜(C→G)最も美しい展開です。 5度は一番遠い距離なのです。

・6度への展開 〜(C→Am)オーソドックスな展開です。 コードを聴いただけで幾つも曲が思い出されるでしょう。


それでは、よくある基本的なコード進行を紹介しておきます。

C → Am → F → G
(循環コード)

C → G → Am → Em

Am → G → F → C

Am → C → G → Am

C → Em → Dm → G

C → Dm → G → C

FM7 → Dm → G → C
(秋のコード進行)


サビの展開 〜 サビは通常4度へ展開させます。 あるいは1度です。

次は、サビの部分の代表的なコード進行です。

F → G → C → Am

F → C → Dm → Am

C → F → C → G → Am


[2]代用コード

基本コードでは単純なので、わざわざ違うコードを使う(代用する)場合があります。曲に雰囲気を持たせることができます。

C  の代わりに Am7

F  の代わりに Dm7

G  の代わりに Em7

Am の代わりに FM7

Em の代わりに CM7


[3]その他の展開

「1単音」の終わりにふれたメロディの特殊な音については、コードの特殊な展開として捉えると解りやすいです。 特殊な展開をさせると、曲のその部分が変わった感じに聴こえ、曲を個性的にし、曲の印象を長く残させる効果などが期待できます。 インスピレーションでは簡単に出てきませんので、初めは狙って使うようにしましょう。

基本コードのそれぞれには、陰陽を逆にしたコードがあり、そのコードは使うことができます。

基本コード→  C  Dm Em F  G  Am
特殊コード→  Cm D  E  Fm Gm A
keyC


次に、メロディで使う音とセットで見てみましょう。

単 音 →  ド#   レ#   ファ#   ソ#   ラ#
        (レ♭) (ミ♭)  (ソ♭)  (ラ♭) (シ♭)
コード →   A    Cm    D    Fm   Gm
                          E
keyC           F7               C7

気づいた人もいるでしょうが、『E』は長調と短調の間の転回コードですので、基本コードに近い存在です。(『E7』をよく使います。)
ですから、「1単音」で述べた5個の特殊な単音(黒鍵)と同じ数だけ、特殊なコードがあるのです。


[4]不自然な始まりと終わり

メロディは1度で始まり(Bigin)1度で終わる(End)と、自然に始まり自然に終わる感じがします。 それでは面白くないので、わざと1度以外のコードで始めたり終わったり、また、他のコードでじらしてから終わらせたりします。

5度のスタート(GまたはDm)

keyC G → C → G → Am
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


小説 「愛を抱いて」  広告2

2005/10/05 06:30
【広告のページ】

  1981年,その年 東京に生まれたはずの
  夥しい数の 恋愛の中に
  中野の夜を焦がして,なお燃え上がった
  1つの愛が 有った…

  HOLD ON LOVE
  愛 を 抱 い て    B5版 387ページ
      著 ゆうとの   第1回配本実施中!

┌───────────────┐
│ 泣かないで 泣かないで │
│ 心が寒いの? │
│ 夜はまだ 浅いのに │
│ あなたは眠るの? │(主題歌「愛を抱いて」より)
└───────────────┘
  絶え間なく流れる 時間を止めて
  今 鮮やかに甦る  ─ あの日,僕等は確かに そこにいた…

┌───────────────┐
│ この手で あなたに触れて │
│ 不安な夜を 過ごすより │
│ あなたの 心の中の │
│ 想い出で 居たい… │(挿入歌「LAST NIGHT」より)
└───────────────┘

[※小説を最初から読む]
記事へブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0


64. 愛を抱いて

2005/10/03 14:12

   64. 愛を抱いて


 私は解散パーティーの其の夜、久しぶりに香織に逢った理由だったが、相変わらず彼女には毅然とした存在感が有った。私も、彼女がそう簡単に隙を見せるとは、思っていなかった。
「世樹子は新しい部屋、見付かったの?」
「其れが…、未だなのよ。もう、年内の引っ越しは諦めたの。来年又、ゆっくり探すわ。」
「いっそ引っ越すの止めて、ずっと中野に居れば好いじゃない。」
其の日は、ずっと風が強く、陽が傾く頃から随分冷え込んだ。其の処の季節にしては暖かい日が続いていたので、急な外の寒さと風は、肌を斬る様に感じられた。
「何度も、数え切れない位、馬鹿な事許やったけど…、此の部屋での宴会も、今夜で最後なのね…。」
「名残惜しくなって来た? 最後にするのを止めて呉れても、俺達は構わないんだけど。」
「…さあ、どうかしら? 結構、最後って事で、ほっとしてたりして…。」
其れ迄、微かに聴こえていた風の音に混じって、何かが窓を叩く音がした。
「雨ね…。」
誰かが云った。
「うん、雨だ…。」
誰かが答えた。

 「結局、私達は遊園地へ連れて行って貰えなかったわね。」
「スカイ・ダイバーには必ずもう一度チャレンジしなければいけないな。」
「アジサイ寺のあの洞穴、未だ在るかしら…?」
「そりゃ、在るだろう。地震でも来て、埋まってなけりゃ。」
「でも本当、怖かったわ…。みんなと一緒なら、又行きたいわね。」
外の風と雨は、徐々に強くなっている様だった。
「厭ねぇ…。台風の季節でも無いのに。」
「傘持って来て無いんだろ? 心配要らない、帰りには貸して挙げるから。」
「借りる事なんて出来ないわよ。もう、返しに来れないんだから…。」

 「あなた達、ヒロ子やノブに強くアプローチしようとしてたらしいけど、旨く行ったの?」
香織が云った。
「旨く行ってれば解散なんて、してやしないさ。」
柳沢が答えた。
「其れは、そうね。残念だったわね…。其れで、私達の代わりに手料理を作って呉れる女の子は、もう見付かってるの?」
「全然…。」
「そう…。でも、あなた達なら又、直ぐ見付ける事が出来るわよ。急度…。」
「君は、偉く満足そうだな。」
私は香織に向けて云った。
「…其れ、どう言う意味?」
私は香織の言葉には答えずに、続けた。
「君が俺に対して、恨みの有るのは当然だが、どうして柳沢やヒロシや他の者迄、巻き込む必要が有るんだい? 復讐なら、俺だけに向けてやって呉れ。俺は君の気の済む迄、どんな罰でも受けるし、どんな償いも拒否しない。」
「あなた、一体、何を云ってるの…?」
香織は少し蒼ざめた表情で云った。
「中野ファミリーの解散は、私の所為だと、そう云いたいの?」
「君と俺の責任だ。違うかい?」
「違うわ。」
世樹子が云った。
「香織ちゃんは、自分の周りの事で忙しくなって、其れでファミリーを抜けたのよ。こうなったのは、私なんかの気紛れの所為よ。」
世樹子は既に声が震えていた。私は構わず云った。
「香織、君は悪いとは思わないのか? 否、其れより、恥かしいと思わないかい? 柳沢を傷付ける様にして付き合って、別れちまったら、俺と顔を会わせるのが辛かったのかどうか知らないが、まあ、顔を視るのが厭だったんだろうけど、みんなが気にする事は解ってるのに、自分だけの都合でさっさとチームを抜けて行くなんて…。」
私はパーティーの最初から、ずっと香織を観察していた。彼女は少し大きめの無地のセーターを着ていたが、其の袖の先は、彼女の両手の親指に掛かっていた。彼女らしく無い着こなしであった。パーティーの空気は再び緊迫して来た。
「今夜の鉄兵ちゃんは、偉くきついな…。」
ヒロシが呟く様に云った。
「気が付かなくて、御免なさい。どうやら、私が此処に居る事は邪魔だったみたいね。失礼させて貰うわ…。」
そう云うと、香織は立ち上がった。
「待てよ。」
私も立ち上がって、彼女の左腕を掴もうとした。反射的に香織は私の手を振り払うと、其の左手を右腕の下に差し込んだ。瞬間、私は感付いた。私は黙った儘、今度は確りと、彼女の左腕を掴んだ。
「放してよ!」
香織は叫んだ。私は力ずくで彼女の左手を自分の前へ持って来ると、彼女のセーターの袖を捲り上げた。
「痛い…! 放して!」
私は腕を放さなかった。香織の左手首の裏側には、未だ新しい傷痕が、はっきりと残っていた。悲鳴の様な女の泣き声が、部屋中に響いた。世樹子だった。
「何…? 香織!」
フー子が叫んで立ち上がった。香織は観念した様に身体の力を抜いた。私は掴んでいた腕を放した。フー子が香織の側へ行くや否や、彼女の左手を取って、其の傷痕を見詰めた。
「ど…、香織!」
フー子はそう叫ぶと、香織の両肩の下を掴んだ。
「香織! 香織! 香織!… 」
何度も叫びながら、フー子は香織の肩を揺すった。香織は最早、揺すられるが儘に、其の場に立ち尽していた。
「香織! 香織! 香… 」
フー子は最後に、香織の腰の辺りに泣き崩れた。そして、優しくフー子の頭を抱き締めながら、香織は静かに頬を濡らした。風が叫び、雨が泣いていた。

── 12月5日、夜になって、世樹子は飯野荘へ帰って来た。部屋では、香織が一人で背中を向けて坐っていた。「ただいま。」と呼び掛けても、返事の無い様子に世樹子は直ぐ異常を感じて、香織の側へ走り寄った。
「…! 香織ちゃん…!」
世樹子は真っ青になって叫んだ。香織は泣いていた。婦人用の剃刀を手首に当てた儘、
「…此れ以上、どうしても、力が入らないのよ…。」
と云って、香織は泣いた。剃刀の刃の下から、次々と鮮血が流れ出ていた。私が市ヶ谷の駅前から世樹子に電話を掛ける、2日前の事であった。 ──


 誰も殆ど喋らなかった。
時間だけが、幾つも流れた。
我々は唯、崩れて行く許の、其々の心を見詰めていた。

 どうやら風は収まり、雨も穏やかになった様だった。
柳沢が笑っていた。
ヒロシが眠そうな眼をして、カーペットに肘を付いていた。
香織が、世樹子が、フー子が微笑んでいた。
「私は、急度在ると思うわよ。」
「永遠の有る街か…。」
「でもさ、俺達の、人間の哀しみの本当の理由は、永遠が無い事、永遠で在り続けられない事さ…。」
「そうね…。もう私達は、其れを知ってしまったのね…。」
「私…、幸せだけを風船に詰めて、飛ばしてみたい。遠くの街に住む人達へ、飛ばし続けるの…。」
「若しさ、偶然風向きがいつも一緒で、其の風船が同じ処へ飛んで行ったら…、」
「そうよ、そしたら、風船が幾つも落ちて来る、其の街には永遠が有るわ。哀しみが無いんですもの…。」
「そんな街で巡り逢えたら、素敵だったわね。私達…。」
「…でも、私達って、一体何処へ行きたかったのかしら?」
「何処でも無いさ、此処に居たかったんだよ。」
「…此処で、何をしたかったのかしら?」
「…俺達は唯、愛を抱いていたかっただけさ。」

 12月24日の朝、私は大きなスポーツ・バッグを抱えて、中野駅から上りの電車に乗った。電車の中で先程迄、私の側に居た女の事を想い出していた。昨夜、彼女は私の腕の中で、いつ迄も泣いていた。今迄彼女は、1人で居る時には、いつも泣いて許いたのだ。新しい朝が来ない気がして、涙を流し続けたのだ。だから、彼女の笑顔は、いつも懐かしかった。

 東京駅の新幹線口の前に、既に川元は来ていた。私を見付けるなり、川元は云った。
「お前、よく来れたな。多分寝過ごすと思って、心配したぜ。」
水登は一足先に帰省していた。
「今日は、クリスマス・イヴか…。」
ホームに上がるエスカレーターの上で、私はぽつりと云った。列車はホームに入っていた。網棚にバッグを放り上げると、「ビールを買って来る。」と云って、川元は車両の外へ出て行った。
 彼女は私の腕の中で、いつ迄も泣いていた。やがて、泣き疲れたかの様に、彼女は静かに眠り始めた。

    泣かないで 泣かないで
    心が寒いの?

    夜は未だ 浅いのに
    あなたは 眠るの…?

 彼女は安らかに眠っていた。其の寝顔は穏やかで、まるで眼覚めればもう1人だと言う事に、気付いていないかの様だった。彼女は最後迄、優しかった。そして、私は最後に優しかった。彼女は、ほんの細やかな愛を抱いて、今は唯眠っていた。
 ゆっくりとホームが動き始めた。ビールを半分一息に呑んで、私も眠りに就こうとしていた。東京の街が、静かに遠ざかって行った。



                              完 



                           〈六四、愛を抱いて〉





  長い間、御愛読有り難う御座いました。
  御意見、御感想、御質問等、左記へお知らせ願えれば幸いです。
                            筆者
記事へブログ気持玉 / トラックバック / コメント


続きを見る

トップへ

月別リンク

悠久の唄/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]